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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

CT基礎知識〜CT値〜

執筆:キャミック練馬センター長 大西 ゆみ(獣医師)

CTの基礎知識

先月は、基礎的な用語説明をしました。
今月は、“CT値”について、もう少し詳しくお話しします。

先月「CT値とは水を0、空気を-1000とし、X線吸収率を数値化したもの」と説明しました。実際の臓器ではどうなのでしょうか?

CT値とは

それぞれの臓器は、正常ではだいたい決まったCT値を呈します(表)。

骨皮質は1,000HU前後、肺(吸気)は-900HU前後、多くの軟部組織(実質臓器や管腔臓器の壁)や血管内は30〜60HU、肝臓や脾臓はやや高くて50〜70HU、脂肪組織はかなり低くて-120〜-130HUといった具合です。甲状腺は特殊で、内部にヨードを含むため、正常で100〜120HUほどの高いCT値を示します。

CT値が正常と大きく異なっていれば、病的変化を疑います。例えば、肝臓のCT値がびまん性に低値(CT値40HU以下)を呈すると、脂肪肝の可能性があります。肝臓の中に周囲の実質と異なるCT値の腫瘤性病変があったとして、そのCT値が30〜70HUくらいなら充実性(軟部組織陰影すなわち腫瘍や過形成等)、CT値が水に近い10〜20HUほどの場合は嚢胞(液体貯留)を疑います。

 

胆嚢/胆管や腎盂/尿管/膀胱内の結石は、X線写真同様に不透過性の粒状影(CT値は100HU以上)ですが、CT検査ではより小さいものが、より正確な位置で把握できます。

 

もちろん、CT値だけでは判断できません。正常な臓器では、形が整っていて、辺縁がスムーズであり、CT値が均一である、というのも大事な特徴ですので、病変の形や拡がり、数、CT値のむら(不均一さ)等も合わせて考えます。

 

そして、CT検査で大きな威力を発揮するのが、造影剤投与後の変化ですが、今後のコラムにバトンタッチいたします。

症例画像〜平滑筋腫〜

腹腔内腫瘤を主訴にCT検査を依頼される際、時々、非常に重度の低血糖を呈する症例を経験します。

 

低血糖の鑑別には多くの疾患が挙げられますが、腫瘍に関連する疾患としては、主にインスリノーマと膵外腫瘍の2つが挙げられ、キャミックでもインスリノーマの症例を比較的多く経験します。

 

膵外腫瘍では、巨大な腫瘍による消費の亢進(肝細胞癌やリンパ腫など)と、インスリン様物質を産生する腫瘍に分けられます。

 

【症例】ビーグル 去勢雄 11歳 体重8.26kg

【主訴】低血糖、腹部腫瘤

【経過】1ヶ月前から徐々に悪化するふらつき、徐々に悪化。

血液検査で重度の低血糖(30m/dl前後)、腹部超音波検査にて上腹部に巨大な腫瘤を認めた。

画像所見

上腹部右寄りに最大径:約11.2×11.1×7.1(体軸×横幅×高さ)㎝の歪な軟部組織陰影の腫瘤(CT5080HUCT100300HUの石灰化を伴う)を認め腫瘍を疑った。

 

周囲で多くの臓器(膵臓、胃、十二指腸、小腸、盲腸~上行/横行結腸、肝臓外側左葉、腹壁など)に密に接するが(癒着の可能性がある)、それら臓器との連続性は指摘できず、由来不明であった。

その後の経過

主治医のもとで開腹、幽門部からの発生が確認され、摘出された。粘膜、粘膜下織は残して切除できたとのこと。膵臓右葉と癒着しており一部切除した。術後低血糖は改善された。

病理

胃平滑筋腫

担当獣医師よりコメント

画像診断を初めて10年以上経ちましたが、毎週の様に新しい発見があります。今回の症例も、疑わしいと思いながらも由来部位を強く指摘できませんでした。また、何度も平滑筋腫は見てきましたが、今回のように、

インスリン様成長因子を分泌するケースは初めてです。
一生勉強だと言い聞かせながら、今日も頑張ります。依頼病変の先生からの結果を教えていただく事で、私たちの検査は完了します。
いつもたくさんの情報をありがとうございます。