医療コラム
MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。
クリプトコッカス脳脊髄炎
2025年もすでに12分の1が過ぎてしまいました。なんと早い。。。
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さて今年のコラムは、私たちが実際MRIやCTを読影する上で参考にしているおすすめの報告をご紹介していきたいと思っています。実際の症例や記載している所見内容を織り交ぜながらお伝えできたらいいなと思っています。
では、記念すべき1回目は2010年に報告されました、感染性脳脊髄炎のお気に入りを!
カリフォルニア・デイヴィスのJ.E. Sykesらによる報告
Clinical Signs, Imaging Features, Neuropathology, and Outcome in Cats and
Dogs with Central Nervous System Cryptococcosis from California
J.E. Sykes, J Vet Intern Med 2010;24:1427–1438
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1939-1676.2010.0633.x
*Free Accessですので、気になる方はよかったら
内容
真菌性髄膜脳炎の原因で最も多いのはクリプトコッカスです。
鼻型/中枢神経型(鼻型からの派生も単独もあり)/皮膚型/全身型がありますが、本報告は中枢神経型に特化した貴重な報告です。
猫26匹、犬21匹の臨床所見、画像診断、病理組織所見を比較し、治療結果を評価しています。
クリプトコッカス症の報告は複数ありますが、MRI所見と脳脊髄液についての記載が多いのが私たちに必要な所以です。
MRIの所見は多様で、多発性・単発性病変が脳のどの領域にも見つかっています。病変は液体様の信号を示すものから、造影増強が顕著な病変まであります。意外なことに感染性脳炎でよく見られるリングエンハンスは少なかったと記載されています。
髄膜病変も多く見られますが、程度は様々です。肉眼所見でも髄膜のうっ血や浮腫、不透明度な増加があるものから、あきらかな結節形成まで幅広い様です。
MRIの多様性は髄膜炎、ゼラチン様偽嚢胞形成を伴う髄膜炎、肉芽腫性腫瘤病変という病理学的所見とも相関していました。
他の所見としては、視神経の腫大や内側咽頭後リンパ節の腫大です。また鼻腔や前頭洞の確認も重要な項目です。
脳脊髄液(CSF)での診断精度は高く、抗原検査が最適です。また猫:81%/犬:73%でCSF中のクリプトコッカス菌体が確認されています。
<出典:Journal of Veterinary Internal Medicine Volume24, Issue6 November/December 2010 Pages 1427-1438
Wiley Online Library https://doi.org/10.1111/j.1939-1676.2010.0633.x>
キャミック症例
〈症例〉
雑種猫 1歳8ヶ月 去勢雄 4.5kg
<主訴>
・半月前より食欲低下
・全身揺れている、現在は起立歩行困難に進行
・神経学的検査:横臥位 四肢不全麻痺 視力消失 左急速相眼振
・瞳孔散大 対光反射消失
MRI所見
・左側頭葉に径10mmの腫瘤形成 T2WI:高信号、T1WI:低信号、内部にわずかな造影増強
・他にもT2WI:高信号の微小な所見を約10箇所あり。いくつかは髄膜の結節様。
・髄膜領域 FLAIR:高信号、軽度造影増強伴う
・両側視神経の腫大
・鼻炎、咽頭炎、中耳炎の可能性
・内側咽頭後リンパ節の腫大(右7.5 左8.0mm)
・脳脊髄液 色調:無色透明 細胞数:233個/μl(正常:0-3個)
抗原検査:クリプトコッカス陽性
この報告では、抗真菌治療を受けた32%が1年以上寛解していたそうです。す、少ない。。。(別の報告でも治療を受けた症例の死亡率が65%程度と報告されています)。
実は私たちもMRI後数日で亡くなる症例を何度か経験しています。今回の報告では診断後4日以上生存している症例は長期予後が期待できるとされています(別の報告では7日以上です)。
また診断時、意識状態の異常が伴う症例の予後は非常に厳しい様です。
クリプトコッカス症は、予後には極端な差があります。
疑いがある場合MRI撮影後すぐに治療に入れる様、「クリプトコッカス症」の診断に努めたいと思います。