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副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

副腎皮質機能亢進症とは、副腎という組織からコルチゾルというホルモンが過剰に分泌され、様々な症状を呈する病態です。
原因は脳の異常と副腎の異常に大別されます。

【コルチゾルが分泌されるしくみ】右図→
①脳の下垂体から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)というホルモンが放出されます。

②それにより副腎からコルチゾルが血液中に分泌されます。

③正常では血液中のコルチゾルが増えると、下垂体からのホルモン分泌が抑制され、一定の濃度が保たれるようになっています。

=== 原因 ===
1. 下垂体腫瘍(下垂体性)
2. 副腎腫瘍(副腎性)
3. 副腎皮質ホルモン剤の過剰投与(医原性)
この中でも特に下垂体性が最も多いと言われており、全体の80〜85%を占めています。

クッシング

【おもな症状】

1. 多飲多尿、多食
2. 腹部膨満
3. 脱毛
4. パンティング(ハァハァする)
5. 両側性脱毛 など

【好発品種】

犬で多く、猫では稀だと言われています。
プードル、ジャーマン・シェパード、ダックスフンド、ビーグル、テリア種、ラブラドール・レトリバー、ボクサー、ボストンテリア など

【診断】

1. 血液検査(アルカリフォスファターゼ・コレステロール値の上昇等)
2. 画像診断
① CT検査:腹部の検査により副腎の大きさや形に異常がないか確認する。
② MRI 検査:脳の検査により下垂体の大きさや形に異常がないか確認する。
3. ホルモン定量(血液検査)
ホルモンの値を調べる事により、原因が下垂体なのか副腎なのか予測出来ます。

【治療】

□内科療法・・・がん剤やその他の薬物による治療
□外科療法・・・下垂体切除・副腎摘出
□放射線療法
など

【MRI/CT画像 〜正常〜】

①MRI画像 矢状断像

②MRI画像 横断断像

③CT画像 冠状断像

④CT画像 横断断

①②
○で囲んだ所が下垂体です。脳の下側(腹側)に位置し、正常では造影剤により増強が認められ、白く見えます。

③④
○で囲んだ所が副腎です。腎臓の内側に左右1個ずつあり、正常では造影剤により比較的均一に増強が見られます

【腹部CT画像 〜症例1 ゴールデンレトリバー 11歳 メス〜】

□症例1 
ゴールデンレトリバー 11歳 メス
<主訴>腹囲膨満、血液検査で肝数値上昇

【画像診断】
右の副腎と比べて左の副腎は非常に大きく、形も不整に見えます。また造影剤による増強も不均一で少し暗く見えています。

副腎腫瘍の疑い

【頭部MRI画像 〜症例2 ミニチュアダックスフント 5歳 オス〜】

□症例2 
ミニチュアダックスフント 5歳 オス
<主訴>多飲多尿、元気が無い

【画像診断】
正常なら下垂体が存在する位置から連続し、造影剤により増強されて周囲と境界が区別できる腫瘤が見られます。腫瘤の中は白く見える所とやや暗めに見える所があり不均一な増強が見られます。

下垂体腫瘍の疑い