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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

犬のインスリノーマと戦うために

執筆:画像診断本部 学術担当 青木 琴代(獣医師)

さてさて寒い日が続きますが、みなさんお元気でしょうか?冬は好きですが、そろそろ暖かさが恋しいですね。

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今月は犬のインスリノーマに関連する文献を2つ紹介したいと思います。
1つは今までの報告をまとめたレビュー、もう一つは撮影タイミングについての報告です。

インスリノーマは以前より撮影タイミングが難しい腫瘍として君臨しています。
今でこそ列数の多いCT機器が普及してきているので撮影自体に苦労することは少ないかもしれませんが、この報告を参考にしていただければ4列や16列のCTでも分かる可能性は十分にあると思います。

文献紹介(1)

では、2023年9月にイギリス、ハートフォードシャー州、Adrianna Skarbek氏より報告された、犬のインスリノーマにおけるCTプロトコルの最適化を検証した文献

“Confirmed and presumed canine insulinomas and their presumed metastases are most conspicuous in the late arterial phase in a triple arterial phase CT protocol.”
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/vru.13278

320列の最多列CTを用いて、動脈相を3つ+静脈相に分けて検証しています。
すごい技を使ってきます 笑   そしてそれが知りたかった!!

• Early Arterial Phase:早期動脈相(約14–36秒):
肝動脈の造影が開始されるが、門脈には造影剤が流入していない状態

• Middle Arterial Phase:中期動脈相(約23–44秒):
門脈への造影剤流入が始まり、一部の膵腫瘍が強調される

• Late Arterial Phase:後期動脈相(約30–54秒):
門脈が明瞭に造影され、膵腫瘍や転移病変のコントラストが最大化

• VP(Venous Phase:静脈相)(造影開始60秒後):
門脈および肝静脈が完全に造影され、肝実質が均一な造影パターンを示す

検証の結果、原発も転移も含めると後期動脈相(30~54秒)が、一番精度が高かったそうです。
ただ転移病変とそうでない病変の見分けが難しいことがある様です。



同文献より引用
A)早期動脈相  B)中期動脈相  C)後期動脈相  D)静脈相

<出典:Veterinary Radiology & Ultrasound Volume64, Issue5 September 2023 Pages 834-843
Wiley Online Library https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/vru.13278

文献紹介(2)

2つの目の報告は2022年9月にロイヤル・ベテリナリー・カレッジのFloryne O Buishand氏が1人で犬のインスリノーマの診断、治療、予後について35本の原著論文を参考にレビューを出されています。すごくいい感じのまとめです。

“Current Trends in Diagnosis, Treatment and Prognosis of Canine Insulinoma.”
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36288153/

よく使う情報を以下に!

●診断平均年齢: 9.1歳(3~15歳)、犬種による偏りなし
●膵左葉または膵右葉 に多く、膵体部はまれ、4~14% では多発原発巣
●40~50% において、手術時点ですでに転移(腹部リンパ節および肝臓 に多い)
●CT診断が不可欠 3相撮影することで原発巣の検出は96%に
●犬のインスリノーマは転移または腫瘍再発がほぼ必ず起こるため、予後は慎重に
●生存期間および無病期間 治療法での比較
 ◆部分膵切除を受けた犬
  ・無病期間:12か月(0–55か月)
  ・生存期間:14か月(0–51か月)
 ◆内科治療のみを受けた犬
  ・生存期間:4か月(0–18か月)
 ◆術後低血糖が持続する場合、生存期間は有意に短縮(90日 vs 680日)

<出典:Veterinary Sciences 2022 Sep 29;9(10):540. doi: 10.3390/vetsci9100540.
National Library of Medicine https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36288153/

術後低血糖が持続するということは、術前に転移病変が検出しきれていない可能性があると論じられています。また手術後の無病期間と生存期間が2ヶ月しか違いません。症状が再燃するとかなり厳しいということですね。

キャミック症例

当社でインスリノーマと診断された犬20頭は以下の特徴がありました。

●平均年齢11歳(6〜15歳)
●犬種による偏りなし
●場所        膵右葉6hd 膵左葉11hd 膵体部2hd、膵右葉/左葉1hd
●膵臓病変の数    1箇所:17hd 2箇所:2hd 多発:1hd
●CT診断時の転移  35%(7/20hd)
●転移の箇所     肝臓/左肝リンパ節/十二指腸付近の背側のリンパ節

それと今回インスリノーマの症例を集計していた時、症状について意外なことがありました。

例えば1ヶ月前から少し元気がなくて。。。などある程度の潜伏(?)期間があると思っていましたが、低血糖に起因する症状が出てから、数日でCT検査に来る症例が意外と多かったです。

調べてみたところ、血糖値が急速に低下しないと(数時間以内に36mg/dL)、重篤な低血糖症状は起こさない様です。

またインスリノーマの肝臓転移の様子は、10歳以上の犬でよく見る肝臓/結節性過形成の造影パターンによく似ています。発症年齢からみても、鑑別するのが難しいです。その為、術後の血糖値の推移を見ていただくことは非常に重要だと実感しました。

できるだけ見逃さない様に、撮影も読影も注意していますが、画像では100%診断するのはとても難しい病気です。先生方の臨床データと組み合わせて、慎重な予後判断をお勧めします。

また最近の超音波装置は非常に素晴らしいので、今まで報告されている超音波の診断精度はどんどん更新されるだろうとも思っています。
ご紹介したレビュー文献には、食事や内科治療、管理方法も詳しく書かれていますので、よかったら参考に!

症例紹介

<症例>
ヨークシャー・テリア 11歳8ヶ月 去勢雄 3.8kg

<主訴>
・3日前に突然の発作、ふらつき
・血液検査にてGlu46mg/dl

CT所見

・膵臓右葉端に径15mmの結節性病変1箇所あり
・動脈後期相(造影後36秒)で明瞭に検出される
・明らかな転移はないが、肝臓に動脈相で増強される形態不整な所見あり(結節性過形成を疑う)

予後

・CT検査の翌日に膵臓右葉先端の腫瘤切除し、病理組織にてインスリノーマと確定
・術後経過良好

▼ ▼ ▼ 7ヶ月後 ▼ ▼ ▼
・ふらつきと震え Glu22mg/dl

7ヶ月後のCT所見

・膵臓に結節性病変はなし
・右腎内側に12mm程度の結節性病変があり、膵臓や十二指腸に関連するリンパ節の腫瘍化を疑う
・肝臓に前回同様、動脈相で増強される所見を複数認めるが、一部は境界明瞭な結節形成であり、転移を疑う