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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

CT基礎知識〜胸部の読影1〜

執筆:学術担当 兼 ひがし東京副センター長 青木 琴代(獣医師)

CT基礎知識

〜胸部の読影1〜

今回は胸部の読影について話したいと思います。

胸部読影は最も難易度の高い分野であり、私の永遠のテーマでもあります。

まずは最も多く遭遇する、肺野/腫瘤性病変について。

肺野/腫瘤性病変を読影する時のポイントは5つあります。
これらを総合して腫瘍かそれ以外か、はたまた原発か転移かを判断してきます。


① CT値と造影増強
② 場所
③ 同肺葉内への転移の有無
④ 他肺葉への転移
⑤ リンパ節への転移の有無

場所

まずは病変肺葉の確定です。
最初に、右左と前葉もしくは後葉寄りかを決定します。
その後、肺葉の境界と気管支の走行を追っていきます。

▽気管支の走行を3Dにしました。
右中葉気管支は最も腹側方向に向かっているので、誤嚥性肺炎が多いのも頷けます。

肺葉の境界は、血管や気管支構造が消失するのと、肺葉間隔壁により境界が生じます。
▽動画【黄色矢頭】

次に病変/形状把握です。
原発病変も転移病変もざっくりというと、球形をしています。
気管支や血管、過去の損傷に伴う線維化などは円柱状や線状をしています。

球形の構造物は移動すると消失する。筒状は連続して確認できる。
単純ですが、このポイントを踏まえながら何度か画像を動かしながら探していきます。

原発病変は初めて見た方でも比較的分かり易いですが、細かい転移を見つけるのは少し練習が必要です。
肺の辺縁でよく見られる微小且つ高吸収”osteoma(肺骨腫)”と
呼ばれる所見を探せるようになると、小さい転移などにも気付けるはずです。

▽ ”osteoma(肺骨腫)” です。

リンパ節

最後にリンパ節についてです。

肺野病変で注目すべきは、気管気管支リンパ節です。
気管分岐部に位置し、左右と中央、計3つを通常確認しています。
今月の症例紹介でも出てきますので参照していただけると嬉しいです。

どんな疾患にも性格があります。
例えば、原発性肺腫瘍は猫と犬では全く性格が異なります。
犬は転移が少なく、切除すれば終わりのことも多々ありますが、猫はそうはいきません。
例え画像上明らかな転移がなくても、どこかにあるはずだと小さな所見も”疑い””疑い”を記載します。

画像診断は、まず詳細な解剖学的理解、次は疾患への造詣、病理組織/病態生理学とのすり合わせ、最後は初めで出会う病変への予測で完成していきます。

主治医の先生方のご経験や結果がいつも非常に勉強になります。ありがとうございます。

心電図同期CT

最後に一つ、コマーシャルを!!

キャミック城南では心電図同期CTを行なっております。
心電図同期CTは、撮影時の心電図を元に画像を繋げ、あたかも停止した心臓の画像を構築します。

心臓はもちろん、心臓の動きによりブレが生じる縦隔や肺の状況も綺麗に確認できます。

下記の心電図同期を行なった画像では、心臓と縦隔病変との境界も明瞭であり、
心臓/冠動脈(左回旋枝)もしっかり確認する事ができます。

症例画像

〜嘔吐から始まった慢性発咳〜

●キャバリア・K・C・スパニエル
●1歳10ヶ月、去勢雄
●体重:7.0kg
●体温:39.4℃、心拍180回/分(雑音なし、リズム正常)
●既往歴:なし
●血液検査異常
白血球↑:201×102/μl
CRP↑:5.0mg/dl

□□□臨床経過□□□

==1病日==
原因不明の急性嘔吐、胸部レントゲンに特異所見なし
嘔吐症状が強いので入院

==3病日==
発咳
胸部レントゲンにて、肺野左前葉後部の肺胞パターン
誤嚥性肺炎を疑い加療

==4〜40病日==
症状およびレントゲン像の良化と増悪を繰り返す
一時的なステロイドや抗生物質追加など

==41病日==
CT検査

==50病日==
肺葉摘出術

レントゲン

肺野/左後葉領域の肺胞パターン
横隔膜左側と一部シルエットサイン陽性

CT所見

□肺野/左後葉の腹側領域に境界明瞭なコンソリデーションを認める。
病変は後葉気管支/腹側区域気管支領域であり、同気管支内には線状の高吸収所見【赤矢頭】と泡沫状の内容物を認める。
気管支は内容物により拡張するが、連続性は確認される。

□一部胸膜(胸壁)との癒着の可能性
・肺野/右前葉(背側)の一部に限局的なすりガラス陰影
・肺野/左前葉前部にもわずかな線状影
・中央および左側気管気管支リンパ節は9~10mmに腫大している

※コンソリデーションとは
血管が見えなくなるほど肺野が白くなった時に用いるCT用語

手術結果

後葉気管支に杉の葉の様な植物が3本入っていた。
細菌感染も起こしており、胸膜癒着もあった。

診断

気管支内異物に伴う化膿性肺炎

担当者コメント

始まりは嘔吐でした。
しかも、詰まった場所は後葉…
なぜこんなに飲み込んだ?
非常に不思議な症例が日々来院されます。
迷った時はご相談ください。
お力になれる様、日々精進します。