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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

MRI基礎知識〜拡散強調画像 DWI Diffusion-weighted imaging〜

執筆:画像診断本部 学術担当 青木 琴代(獣医師)

拡散強調画像 DWI Diffusion-weighted imaging

今回はT2*強調画像に続いて、少し特殊な撮像方法であり、非常に優秀な拡散強調画像についてお伝えしたいと思います。
10年前MRIを始めた当時は、ガサガサしてよく分からない!と思っていました。
あの時の自分を叱責したいです。

 

拡散強調画像(以下DWI)はT2強調画像の仲間で、撮影するとADCという画像がセットで表示されます。
体中の水素原子は常に不規則に運動しており、これをブラウン運動と呼びます。この動きを画像化したのがDWIです。非常に微小な動きを画像化しますので強い磁場が必要です。
ADCは動きの程度を定量化したもので、必ず一緒に読影します。

 

ある病変の中では、水素原子のブラウン運動は抑制されます。
例えば、脳室は脳脊髄液が貯留しており、沢山の水素原子が自由に動き回っています。一方粘稠度の高い液体の中では水素原子は動き辛くなります。
この“動き辛い状態” = “拡散し辛い” = “拡散低下” と表します。

 

拡散の低下で診断できる代表疾患は以下です。
① 急性期の脳梗塞
② 膿瘍
③ 細胞密度の高い腫瘍(リンパ腫や悪性度の高い腫瘍など)

 

DWIが最も有効な急性期脳梗塞をMRIとシェーマで説明したいと思います。
血管が詰まると(梗塞)、細胞性浮腫の状態となります。細胞の間は狭くなり、細胞間質にある水素原子は動きが妨げられます。
MRにて、小脳右側にT2強調画像で高信号(白)の領域が認められます。DWIではより顕著な高信号(白)を示し、ADCにて低信号(黒)となっております。
ADCが低信号という事は、この領域の拡散が低下していると読みます。
症例は四肢のふらつきが主訴でしたが、2週間後には無治療にて症状が改善しています。

症例紹介〜膿瘍〜

〈症例〉

ヨークシャー・テリア 10歳 去勢雄 1.96kg

 

〈主訴〉

1週間前より徐々に右側/眼瞼が腫れてきた。
口を開けると痛がっており、食欲不振
腫れが少し引いた気がする

 

〈神経学的検査〉

右眼瞼運動性の低下、瞳孔不対称、右眼球の生理的眼振低下

 

〈画像所見〉
右側頭部に内部増強効果の乏しい袋状の構造物を認める(T2強調画像/FLAIR画像:高信号、T1強調画像:低信号)【黄色丸】。
病変は拡散強調画像で高信号を示し、ADCにて拡散低下が示唆される。
側頭病変側の髄膜領域は造影増強を認める【赤矢印】。
眼球周囲の筋肉も造影増強と腫脹を呈す。

【脳脊髄液検査】
色調:無色透明   細胞数:636個/μl(正常:0-5個)

 

【治療と予後】
抗生物質の内服にて外貌の変化も一般状態も改善
右顔面の運動性低下も改善しました!!