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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

MRI基礎知識〜脳神経異常(視覚経路編)〜

執筆:画像診断本部 今井 光(獣医師)

脳神経異常

- 視覚経路編 -

これまでMRIの基本原理や画像の種類についてお伝えしてきました。
今回と次回は脳神経異常についてです。

脳神経は嗅神経〜舌下神経までの12対ありますが、今回は視神経に関連した視覚経路異常についてです。

 

視力消失や対光反射の消失といった眼に関する異常は、よく遭遇されるのではないでしょうか?眼球自体に問題があることが多いと思いますが、視神経〜視交叉、脳実質などMRI検査の適応範囲に異常があるケースもあります。

 

視力消失の評価では、威嚇瞬目反応を最初に確認されると思います。威嚇瞬目反応は小脳を経由した経路であるため、視覚が保たれていても反応が消失する可能性があります。その為綿球落下や障害物歩行検査と合わせて観察することが重要となります。また、威嚇瞬目反応は手の動きによる風の刺激や顔周りのヒゲ・毛に少しでも触れると、角膜反射が誘発されてしまうため注意が必要です。

 

以下の図は視覚経路と対光反射の経路です。

 

網膜からの視覚情報は視交叉に伝わり視床領域の視索から外側膝状体、そして後頭葉の視覚野へと伝わり視覚として認識されます。

一方で、対光反射は視索まで視覚経路と同様の経路を辿り、視索からは外側膝状体ではなく中脳の視蓋前核そして動眼神経副交感神経核(EW核)へと伝わり、動眼神経を介して瞳孔が収縮します。経路の途中から視力と対光反射では経路が分かれるため、視覚障害や対光反射の有無を組み合わせることにより、病変部位をある程度予測することが可能となります。

 

症例紹介

【症例1】視神経の髄膜腫

【症例】小型犬ミックス 11歳 避妊雌

 

【主訴】

右眼の眼球突出、眼窩massの疑いのため精査
2〜3ヶ月前から右目を擦り付けるようになった

 

【神経学検査】

右眼威嚇瞬目反応(-)、右眼綿球落下テスト(-)、右眼対光反射(-)

 

【画像所見】
右側眼窩領域に体軸2.5×横軸2.2×縦軸2.1cm、円錐形の腫瘤性病変を認める。病変はT2強調画像/FLAIR画像で高信号、T1強調画像で等信号を呈し、造影剤により比較的明瞭(内部は不均一)な増強を認める。病変中央には眼球後縁〜視交叉付近まで連続する線状構造物を認め、視神経の走行を疑う。

 

 

症例紹介

【症例2-1】眼型GME(1回目)

【症例】M・ダックスフンド 7歳 去勢雄
※本症例はフォローアップ検査を実施しております。

 

【主訴】

3〜4週間前から急に目が見えなくなった、ものにぶつかる

 

【神経学検査】

左右の威嚇瞬目反応(-)、左右眼綿球落下テスト(-)、左右対光反射(-)
姿勢反応は正常、歩かせると立ち止まる

 

【画像所見】
頭部MRI検査では、視交叉領域は顕著に腫大して見られる。
大きさ約8.5×6.2×4.3cm(体軸×横軸×高さ)の腫瘤状を呈し、造影剤により顕著な増強を認める。左右視神経も腫大傾向に見受けられ、左右視索の一部にも造影増強を認める。これらの所見から、眼型GME等の炎症性疾患などを疑う。

 

【脳脊髄液検査】細胞数:168.3個/μl(正常:0-5個/μl)

 

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【症例2-2】眼型GME(2回目 フォローアップ検査)

【検査日】前回のMRI検査より78日後にフォローアップ検査を実施

 

【主訴】

MRI検査後、ステロイドと免疫抑制剤治療を実施したが視力の改善は見られない。

 

【神経学検査】前回と変化なし

 

【画像所見】

今回の頭部MRI検査では、前回(78日前)視交叉に見られた重度腫大は顕著に改善している。前回顕著に見られた造影増強も、今回は概ね認められない。視神経の腫大や視索の造影増強も認められない。視神経は通常よりやや不明瞭であり、萎縮している可能性がある。

 

【脳脊髄液検査】細胞数:18.7個/μl(正常:0-5個/μl)