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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

MRI基礎知識〜脊髄疾患2〜

執筆:画像診断本部 佐藤 麻実(獣医師)

今回は脊髄症状のグレード分類についてです。

以下の表は胸腰部及び頚部脊髄症状のグレード分類の表です。

 

 

グレード分類の際に、混同しやすいポイントとして、「引っ込め反射」を「深部痛覚あり」と判断してしまうことがあります。予後の判断にも関わってくるため、「怒る」「鳴く」「振り返る」などしっかりと痛がっているかどうかを見極めることが重要です。(※不全麻痺のような麻痺の強くない症例には、深部痛覚の確認はかなりの痛みを伴うため、行う必要はありません。)

症例紹介

ー 水和髄核逸脱 ー

〈症例〉
イタリアン・グレーハウンド 7歳 去勢雄 6.0kg

 

〈主訴〉
急性の四肢不全麻痺

 

〈神経学的検査〉
姿勢   腹臥
姿勢反応 四肢の固有位置感覚の消失
脊髄反射 前肢は正常にみられ、後肢は亢進して認められた

画像所見

C4-5椎間で腹側から中等度の脊髄圧迫所見を認める。圧迫物質は左右に分かれて隆起する様な形状を呈し(seagull sign)、T2強調画像で高信号、T1強調画像で低信号、造影剤による増強は主に辺縁での増強が見られる。

 

C4-5椎間 水和髄核逸脱

予後

内科治療で1週間ほどで症状の改善が見られた。

水和髄核逸脱

水和髄核逸脱(Hydrated nucleus pulposus extrusion:以下HNPE)は、犬の椎間板ヘルニアハンセンI型やⅡ型のような典型的な椎間板ヘルニアと異なり、圧迫物質が液体〜ゼラチン様の圧迫物質であるため、MRIでは特徴的な画像所見になります。

 

HNPEの発症は急性〜亜急性、症状は四肢不全麻痺〜麻痺を示し、他椎間板ヘルニアと同様ですが、痛みの徴候が少ないとされています。
以前はヒトの椎間板嚢胞と同様のものと考えられていましたが、嚢胞壁を確認できた症例がいないことや、ヒトとは好発部位が異なることから、椎間板嚢胞とは区別される様になりました。

 

頸髄での発症が多く、胸腰髄で見られることもありますがその数は少ないです。また、非軟骨異栄養性犬種及び軟骨異栄養性犬種のどちらの品種でも起こります。

 

治療も他椎間板ヘルニア同様、外科的・内科的治療が報告されていますが、いずれの治療成績も有効とされています。特に内科的治療の成績が良いことが特徴であり、当施設でも短期間で圧迫が顕著に軽減している様子を確認しています

 

圧迫物質が左右に分かれて隆起する形状が“かもめ”のような外観を呈することから”seagull sign”と呼ばれる。

ミニチュア・ダックスフンド 10歳 急性四肢麻痺の症例