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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

MRI基礎知識〜脊髄疾患1〜

執筆:画像診断本部 原 香織(獣医師)

前回までは脳神経異常についてお話ししてきましたが、今回から脊髄疾患についてです。

脊髄疾患の局在診断

四肢に神経症状が出ている場合、神経学的検査を元に病変の位置を絞っていきます。

神経学的検査は、まず初めに視診と触診から始めます。動物の意識状態や姿勢、歩行を観察し、注意深く触診をしていきます。次に姿勢反応、脊髄反射を行います。前肢に症状がある場合は脳神経検査も併せて行います。

 

犬や猫の脊髄は4つの脊髄分節に分かれ、障害される部位によって症状や脊髄反射が異なります。前肢と後肢の脊髄反射を正しく評価することで病変位置を予想したり、除外することができます。

 

以下の図は椎骨と脊髄分節の位置関係です。

 

脊髄反射の評価

脊髄反射の評価は正常を“2”として、“0”〜“4”まで5段階に分けられます。反射が亢進している場合(UMNS)を“3”、低下している場合(LMNS)を“1”と記します。

四肢の脊髄反射を組み合わせて脊髄病変の局在診断が可能になります。

症例紹介

【症例1】椎間板ヘルニア

〈症例〉

M・ダックスフンド 6歳・避妊雌・5.4kg

 

〈主訴〉

1日前から後肢が動かない

 

〈神経学的検査〉
歩  様 両後肢不全麻痺
姿勢反応 両後肢のCPの低下が認められた。
脊髄反射 右後肢の反射の亢進が認められた。

 

〈画像所見〉
胸腰部MRI検査では、L2-3椎間に右腹側から中等度〜重度の脊髄圧迫所見を認め、椎間板ヘルニアを疑う。
圧迫物質は椎間頭尾側(頭側>尾側)に広がり、L2椎体中央〜L3椎体中央まで認める。

 

〈予後〉
MRI検査当日に手術を実施。手術から11日後には歩様は改善され、しっかり歩行できるようになった。

症例紹介

【症例2】硬膜内ヘルニア+多発ヘルニア

〈症例〉

M・ダックスフンド 9歳・去勢雄・3.9kg

 

〈主訴〉

1日前から後肢を引きずる 尿がでない

 

〈神経学的検査〉
歩様 両後肢不全麻痺
姿勢反応 右後肢CPの消失、左後肢のCPの低下が認められた。
脊髄反射 膝蓋腱反射の低下が認められた

 

〈画像所見〉
L4-5椎間で腹側から比較的重度の脊髄圧迫を呈し、椎間板ヘルニアを疑う。圧迫物質は造影剤による増強は僅かである。圧迫病変部は不整かつ限局して認め、硬膜内への逸脱も否定できない。
病変周囲実質はT2強調画像で高信号を呈し、浮腫/炎症の併発を疑う
上記以外にも複数椎間で多発的に脊髄圧迫所見を認める。

 

〈予後〉
MRI後の手術で、L4-5椎間において圧迫物質は硬膜内へ逸脱していた。