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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

MRI基礎知識〜脊髄腫瘍〜

執筆:画像診断本部 椋代 祐美子(獣医師)

今回は脊髄の腫瘍についてお話ししていきたいと思います。
脊髄腫瘍は発生部位により、以下の3種類に分類されます。

 

(1) 硬膜外腫瘍
脊椎〜脊椎周囲の軟部組織や造血細胞の腫瘍化により、硬膜外腔から脊髄を圧迫します。
犬の脊髄腫瘍で最もよく見られるのがこのタイプです。
EX)骨肉腫、線維肉腫、軟骨肉腫、形質細胞腫瘍、血管肉腫、リンパ腫、組織球肉腫、転移性腫瘍(乳腺/甲状腺/腎臓/膀胱腫瘍など)

 

(2) 硬膜内・髄外腫瘍
硬膜の内側、脊髄の外側に位置する腫瘍です。くも膜下腔を広げることにより、脊髄造影やMRIでゴルフティーサインが見られることが特徴です。
EX)髄膜腫、神経鞘腫、リンパ腫、転移性腫瘍

 

(3) 髄内腫瘍
脊髄実質に発生した腫瘍で、3種類の中で発生頻度は最も少ないです。
症状は比較的急性かつ進行性に見られることが多いです。
EX)上衣腫、神経膠腫、血管肉腫、リンパ腫、転移性腫瘍

 

診断には、シグナルメントや一般身体検査/神経学的検査と併せ、レントゲン・脊髄造影・MRICT検査などの画像診断を行います。また、確定診断には生検・病理組織検査が必要です。

 

レントゲンや単純CT検査は、脊椎の破壊を伴う硬膜外腫瘍で有用です。脊髄実質の圧迫具合や周囲軟部組織の評価には、造影CTや脊髄造影、MRI検査などが必要となります。特に、MRI検査は、いずれのタイプの脊髄腫瘍も抽出することができる最も有用な診断方法で、脊髄実質の評価や、その他の疾患(椎間板ヘルニア/脊髄梗塞/炎症性疾患(MUO:起源不明髄膜脳脊髄炎))の除外にも使用されています。

症例紹介

症例1〜形質細胞腫〜

〈症例〉
イタリアン・グレーハウンド 10歳 避妊雌

 

〈主訴〉
2週間ほど前からどこか痛そう。歩行、起立ができなくなってきた。

 

〈神経学的検査〉
姿勢:横臥
歩様:四肢不全麻痺
姿勢反応:前肢は固有位置感覚、踏み直り反応、手押し車反応など一部低下。後肢は全て消失。
脊髄反射:前肢正常。後肢膝蓋腱反射、前脛骨筋反射、腓骨筋反射亢進。

 

<画像所見>
C5〜T2椎体レベルの椎体背側(主に右側)に腫瘤性病変が見られた【黄色矢頭】。C6〜7椎体の棘突起/椎弓には骨融解が見られた【黄色丸】。C7椎体レベルで脊柱管内に浸潤しているように認められ、脊髄実質を右背側から重度に圧排して見られた。

 

▼ 1回目

 

<予後>
メルファランを投与し、起立はできないが四肢/尾に動きが出てきた。疼痛も緩和された様子。
3ヶ月後のMRI検査では、腫瘤の顕著な縮小が見られ、脊髄実質の圧迫が明らかに軽減された【黄緑矢頭】。脊髄実質は、圧迫が解除されたにも関わらずT2強調画像で高信号を呈して見られ、病変に関連した損傷/瘢痕化/浮腫が疑われた【橙矢頭】。

 

▼ 2回目(3ヶ月後) フォローアップ検査

症例紹介

症例2〜神経鞘腫〜

〈症例〉
チワワ 7歳 避妊雌

 

<主訴>
1年くらい前から右前肢の動きが悪い。MRI検査1週間ほど前から歩行困難。

 

<神経学的検査>
右前肢の姿勢反応低下〜消失(右後肢も一部低下)

 

<画像所見>
右第7頚神経/神経根部より連続して、体軸25.4×横軸18.8×縦軸33.1mmの腫瘤形成を認める。病変は脊柱管内へ連続し、脊髄実質を重度に圧排する【桃色矢頭】。右上腕部筋肉は顕著に萎縮している【青矢頭】。

 

▼ 1回目

 

<予後>
MRI検査後、右前肢断脚及び腫瘤切除を実施。オペ後から抗癌剤使用。
約2ヶ月後のMRI検査では、同病変は神経根部付近に体軸15.5×横軸6.6×縦軸12.3mmで認められ、病変の残存もしくは再拡大が疑われる【水色矢頭】。

 

▼ 2回目(約2ヶ月後) フォローアップ検査