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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

無麻酔CT検査のススメ

執筆:ひがし東京副センター長 堀 治美(獣医師)

現在、犬や猫のCT検査をする際は、基本的に全身麻酔下で行っています。そのため、麻酔リスクの高い症例や気管挿管の困難な症例等は検査自体を諦めざるを得ないことがあるかと思います。また飼い主さまの麻酔への抵抗から検査の同意を得られないこともあるかと思います。

そこでキャミックでは以前より四肢ポジショナー(保定具)を用いた無麻酔でのCT検査を実施しております。

 

すでにご利用いただきその有効性を実感していただいている先生も多いと思いますが、今回はどんな理由で無麻酔検査を選ばれたのか、どういった症例が適応になるのか等詳しくご紹介したいと思います。

症例数は?猫も撮れる?

犬、猫共に撮影は可能です。2022年では猫の検査件数が犬を上回っています。

 

※ただし現在、体重10kg以下という制限があります。(ポジショナーに入らないため)

撮影部位は?どこでも撮れる?

検査の対象となる部位は、胸部および腹部ですが、頭頸部でも撮影が可能なことが多いです。頭頸部はポジショナーで動きを制限することが比較的難しく、無麻酔検査の対象としてお勧めしてはいませんでしたが、挿管困難のため麻酔不可となることが多く、実際には2020年から現在までに68症例の検査を実施しています。

 

※胸部でも、特に肺野の詳細な検査には適していません(呼吸を止めることができないため)。

無麻酔を選択する理由

麻酔リスクの高い症例はもちろんですが、飼い主さまの希望で無麻酔を選択されることも非常に多いです。

 

造影剤は使える?

無麻酔検査でも、基本的には造影剤を使用します。無麻酔検査の約8割以上で造影剤を使用しています。腎不全や全身状態の悪い症例では担当医や飼い主さまと相談して使用しないこともあります。

検査できないのはどんな時?

・重度の呼吸困難で保定のリスクが高い

・重度関節炎等で四肢の伸展ができない

・体動が制御できない・・・鳴き続ける、諦めず動きつづける

・そもそも固定具が装着できない(猫ですごく凶暴な子等)

 

実際に以上の理由で検査ができなかった症例は、年間で数頭ほどで、ほとんどの症例で検査を実施できています。

(麻酔下での検査に移行した症例もあります)

症例紹介

【症例1】MIX猫 8歳 避妊雌 3.6kg

〈症状

半年前から咳が出始め、最近増えてきた。胸部レントゲンで腫瘤確認。

抱っこ時苦しそうな様子あり、呼吸促迫のため、無麻酔検査(胸部)を実施した。

 

画像所見(胸部)

胸腔内に巨大な腫瘤性病変を確認し、心臓/周囲血管との癒着の可能性が示唆された。同時に肺や気管支への影響も評価した。

検査後、麻酔下で摘出し、胸腺腫と診断された。

症例紹介

【症例2】MIX猫 15歳 去勢雄 3.9kg

〈症状

鳴き声の変化および嚥下障害が出ており、レントゲンにて咽喉頭部の腫瘤を疑うことから、気管挿管困難の可能性があると判断し、無麻酔検査(頭部)を実施した。

 

画像所見(頭部)

咽喉頭領域(軟口蓋尾側端)に腫瘤が確認された。浸潤の有無、気道圧排の程度やリンパ節の腫大の評価も行った。

FNAにより扁平上皮癌と診断された。

症例紹介

【症例3】ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア 14歳 避妊雌 6.0kg

〈症状

発作、ふらつきを主訴にかかりつけ病院を受診したところ、超音波検査で副腎腫瘤が発見された。

飼い主さま希望で無麻酔CT検査(腹部)を実施した。

 

画像所見(腹部)

左側副腎の腫瘍化を確認し、腫瘤内部の石灰化や血管浸潤の有無も評価した。

まとめ

無麻酔検査では、呼吸および体動によるアーチファクトが少なからず発生するため、画像の質自体は麻酔下に比べると確かに劣ります。しかし、リスク等のために検査自体を諦めてしまうのであれば、リスクの少ない方法で行える無麻酔検査を考えてみてはいかがでしょうか。

 

 

※呼吸アーチファクトの影響が出やすい横隔膜付近の病変や微小な血管構造、わずかな病変などは読影困難なこともあり、対象物が小さいほどその影響を受けやすいです。

個体や撮影部位等により麻酔下での検査をお勧めする場合もございます。詳細につきましては、各センターにご相談下さい。

なお、無麻酔CT検査の撮影方法の詳細はキャミックホームページをご覧ください。

 

無麻酔CT検査のご案内

▼無麻酔CT検査の流れが分かる動画はこちら

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