医療コラム
MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。
【整理しておきたいキャミック疾患シリーズ】なんといっても胸腰部椎間板ヘルニアが一番多い疾患です(後編)
前回ご紹介した2022年発表
『ACVIMコンセンサス 犬の急性胸腰部椎間板逸脱症』
治療部分を一部ご紹介したいと思います。
個人的に経験が乏しいので報告の通り掲載させていただきますね。
▶https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9511077/
治療 内科 vs 外科
▶ 軽度の神経症状(歩行可能なグレード1-2)では、内科的管理(安静、鎮痛、活動制限)により良好な結果が得られることがある。
▶ 中等度から重度の神経障害(歩行不能、深部痛覚消失などグレード3以上)では、外科的減圧術が標準治療であり、回復率も高い。
▶ 複数の研究により、外科的管理の方が歩行回復までの期間が短く、再発率も低いとされている。
推奨: 運動機能が保持されている場合は内科的管理が選択肢となるが、重度の障害や再発例では外科的治療が望ましい(中等度〜高エビデンス)。
POINT
• 厳密な安静とは?通常4~6週間、その後徐々に運動再開
• 内科治療は外科治療に対し再発率が高い
• 外科治療は非歩行性の神経障害で最も推奨(深部痛覚がある場合の予後は非常に良好)、他内科治療への反応の悪さや繰り返す場合も推奨
• 手術タイミングについては早期の減圧が神経機能の回復に寄与する可能性があるが、遅れて手術をした場合でも十分な回復をする場合もある
• グレード5の症例では外科的減圧により30〜60%の回復率
• 内科的治療不良の予測因子:MRIでの顕著な脊髄圧迫、神経症状の進行性悪化、初回発症時から再発までの期間が短いなど
ここでちょっとグレード1〜5の一般的な脊髄圧迫を並べてみます。


※程度を比べるため同方向からの圧迫となるように画像を一部反転させています※
圧迫程度だけで示しましたが、実際には犬種や体重、筋肉量、また圧迫範囲の広さや脊髄の損傷具合により症状の重さは全く変わってしまいます。特に脊髄損傷の程度は大きくグレードが変化しますし、進行性脊髄軟化症の判断でも重要な所見です。


最後に深部消失症例の予後 について少し
運動機能の完全消失および膀胱・直腸制御の喪失に加えて、感覚機能も消失している状態です。最も予後不良な神経学的グレードであり、歩行能力の回復率は深部痛覚のある症例と比べて著しく低い様です。
• 外科的管理を行なった場合の歩行回復率は概ね50%程度(30~60%)
• 手術は可能な限り早期に行うことが望ましいですが、長時間経過後の回復例あり
• 最大17%で進行性脊髄軟化症(PMM)が発生する
• PMMのリスク因子として、T12-13/T13-L1椎間病変、広範囲の脊髄浮腫、髄液中の赤血球など
• PMMは発症後数日で進行することが多いが、はるかに遅れて発症する症例もいる
• MRIでの脊髄実質の様子が重要!!
その他各手術の方法や時期、フェネストレーション、疼痛管理、排尿管理、リハビリテーションなどについても詳しい記載がありましたので、ご興味のある先生はぜひ原文を!!
進行性脊髄軟化症において、日本はここ数年で急激な変化を遂げていると思います。致死的な症例の命が救われる事はすごい獣医療の進化ですよね。
これもやはりMRIによる診断が重要です。
先月の冒頭に “冬までに一読を” と記載したのを覚えていらっしゃいますでしょうか。
“寒くなるとヘルニア症例は増えるよね“という感覚がありましたが、本当かどうか確認してみました。
2023年〜2025年の胸腰部MRI検査でIVDEが主な原因であると考えられた月毎の症例数と東京都の平均気温をグラフにしてみました(暇なわけではないですよ 笑)。
見事な逆相関!!