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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

【整理しておきたいキャミック疾患シリーズ】なんといっても胸腰部椎間板ヘルニアが一番多い疾患です(前編)

執筆:画像診断本部 学術担当 ⻘木 琴代(獣医師)

忙しい予防シーズンは少し緩やかになったでしょうか。
獣医師、看護師、動物病院で働く全てのスタッフの皆様お疲れ様です。
今回はよくある病気のまとまった知識+αをお届けできたらなと思います。
 
 
ご紹介するのは2022年発表された

『ACVIMコンセンサス 犬の急性胸腰部椎間板逸脱症』

かなり長く重要な報告ですので、いつ出そうか迷っていましたが、なんと言っても胸腰部椎間板ヘルニア重要ですから!冬が来る前にぜひ全文を。
まとめましたがやっぱり長いので、2回に渡ってお伝えします。
▶https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9511077/
 
ACVIM神経科会員のアンケートにより優先されるべき情報を収集し、過去の報告をもとに8人の専門家が臨床的エビデンスを精査、推奨事項を監修した報告となります。

椎間板逸脱症(椎間板ヘルニア)とは

椎間板の真ん中にある髄核は通常水分が80-90%のゼリー状だそうです。
軟骨異栄養性犬種は12番染色体上にある線維芽細胞増殖因子4(FGF4)に関連して髄核が早期に固く変性してしまいます。
これを背景に椎間に負担がかかると、弾性のない髄核が脊柱管に逸脱します。
これがHansenⅠ型の椎間板ヘルニアです。
胸腹部椎間板逸脱症TL-IVDEは1880年代から知られており、軟骨異栄養性犬種の人気に伴い最も多い犬の急性後肢麻痺の原因です。
 


※綺麗な髄核と変性髄核のMRI
胸腰部 T2強調画像(T2WI) 矢状断像
T2WIは水成分を高信号(白く)に示しますので、変性していない髄核は真っ白で綺麗です。
ですがこんな綺麗な髄核はなかなかお目にかかれません。
フレンチブルドッグを見ていただくと分かりますが、3歳で既に全椎間が変性しています。
 

 

上 ミニチュア・シュナウザー 3歳  非軟骨異栄養性犬種
下 フレンチ・ブルドッグ    3歳  軟骨異栄養性犬種


TL-IVDEでは逸脱した椎間板物質が脊髄や神経根に対して損傷を与えることにより、疼痛・運動失調・不全麻痺・対麻痺・排尿障害などを引き起こします。治療は内科的管理および外科的管理のいずれかが選択されます。

診断

MRI/CT/脊髄造影(CT/レントゲン)が比較されています。
麻酔時間とコストが許せば、すべての原因を網羅するにはMRIが一番良さそうです。
以下Pointです。
➀ MRIの感度は非常に高く 98.5%
➁ CTは石灰化病変の検出に優れ、急性・重症例における第一選択となり得る
➂ MRIは軟部組織評価や他の鑑別(腫瘍や梗塞、炎症など)、予後予測に有用
➃ ミエログラフィーは、MRI/CTが使えない場合の代替手段。ただし侵襲的かつ技術的ハードルが高い
 

 
比較されているCTとは通常CTであり、ミエログラフィーはレントゲンもしくはCTとされていました。脊髄造影CTは脊髄圧迫の程度評価には非常に優れています。しかし脊髄の損傷がわからない事、脊髄の腫脹が強いときは造影剤が流れていかない事などが弱点ですね。


ここでちょっとキャミックデータを
2023〜2025年の3年間で胸腰部MRIを撮影した症例をピックアップしてみました。全部で3,374件、年間1,100件ほど検査しています。
主訴は後肢麻痺(不全麻痺〜麻痺)が多いですが、短肢挙上、姿勢反応低下が乏しい運動失調や痛みの症例も含まれます。
MRI検査の結果、概ね椎間板ヘルニアが原因だろうという症例は約82%で、残り18%(606件)はそれ以外が原因でした。
椎間板ヘルニア以外の原因の内訳は以下の通りでした。

 
最も多かったのが特異所見なしで約32.5%(197/606件)。主訴で多かったのは痛みだけの場合で、どこかに痛みがあって中枢神経を検索したけど原因が分からなかった/なかった症例です。
次に多かったのは腫瘍性病変です。約17%(101/606件)ですが、椎間板ヘルニアとは予後も気持ちも全然違いますよね。脊髄腫瘍には硬膜外/硬膜内髄外/髄内と分かれますが、硬膜外腫瘍には多発性骨髄腫も含まれます。一時的にステロイドなどで状況が良くなるケースもありますので、注意が必要です。
3番目に多かったのが脊髄梗塞や他部位に病変が見つかった症例です。脊髄梗塞は3週間以内に症状が回復することが多いですが、椎間板ヘルニアとして運動制限するのか、脊髄梗塞としてリハビリするのか、治療が大きく変わってくる病態です。以前は大型犬や非軟骨異栄養性犬種、若齢〜中年齢が多いとされていましたが、小型犬も良く遭遇します。
4位以下には脊髄炎疑いからMUOと診断し、ステロイド投与で一時的に改善した症例がいました。また、椎体の形状に関連する慢性圧迫が原因で、症状の良化・悪化を繰り返す症例も散見されました。
結局、原因によって治療法や予後が変わるので、原因をはっきりさせる事の大切さを痛感した分析となりました。
 
<脊髄梗塞と腫瘍に関する過去のコラム記事はこちら>
▶MRI基礎知識〜脊髄梗塞〜
▶MRI基礎知識〜脊髄腫瘍〜
▶M.シュナウザーの脊髄疾患について(梗塞VS椎間板ヘルニア)
 
さてさて これで前編を終了したいと思います。
来月は治療から!