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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

CT基礎知識〜膵臓〜

執筆:画像診断本部 阿部(獣医師)

CT基礎知識〜膵臓〜

今回は各臓器別のCT評価のうち腹部臓器の膵臓についてお話し致します。
 
様々な膵臓疾患の中でキャミックにご依頼を頂く頻度が高いのは膵臓腫瘍や膵炎を疑うケースです。
 
膵臓は特に腫瘍性疾患に対してダイナミックCTが非常に役立つ臓器です。膵炎なども超音波検査で検出が難しい場合や他疾患との鑑別の為に撮影する事があります。

膵臓の解剖学的位置と血管走行

膵臓はV字型の鉤状を呈した臓器であり、下行十二指腸に沿って後方へ伸びる右葉、大網の起始部付近を走る左葉、そして両葉が頭側の膵切片で結合し、幽門付近に隣接する膵体から形成されています。
 
膵臓は腹腔動脈と前腸間膜動脈により血液供給を受けます。右葉は肝動脈から分岐した前膵十二指腸動脈から、膵左葉は脾動脈と前腸間膜動脈の分枝である後膵十二指腸動脈から供給されます。静脈は動脈に伴行しており、門脈に流入します。
 

【CT画像】腹側観3D画像

膵臓の造影タイミング

ダイナミックCTについては、以前のコラムにてご紹介致しました。
 
キャミックではTriple-phase helical CT法で撮像する場合、多くのケースで動脈相(15〜20秒)、門脈相(40〜60秒)、平衡相(120〜180秒)での撮影を行なっていますが、特に膵臓腫瘍を疑う場合は動脈相をさらに2相に分け、早期動脈相(15秒)/後期動脈相(30秒)として実施しています。
 
特にインスリノーマでは様々な検討が報告されています。
 
動脈相で周囲実質より増強を呈する報告やある時相で他時相と異なる増強を示すなど、複数の報告があります。これらを踏まえると、複数回の撮影をすることが重要であると考えられます。
 

インスリノーマ(犬)

後期動脈相/門脈相で顕著に増強される結節が確認されました。平衡相では周囲実質とほぼ同等となっています。
[T・プードル、 14歳、 去勢雄]

インスリノーマ(猫)

非常に稀な猫のインスリノーマです。周囲実質と比較し低吸収な結節を複数認めました。
[アメリカンショートヘア、 8歳、 去勢雄]

膵外分泌腺癌

周囲実質よりも低吸収に認められ、一部で石灰化を疑う高吸収所見を含んでいました。
[M・ダックスフント、 13歳、 避妊雌]

膵炎

実質は腫大し、形態や辺縁は不整に見られます。さらにCT値および増強効果の低下が認められます。また、周囲の脂肪組織は不明瞭です(以下、症例報告にて紹介)。

症例画像

〜急性膵炎〜

【症例】T.プードル 10歳 去勢雄 3.9kg 
【主訴】急性膵炎
【経過】膵炎治療中に肝酵素の上昇がみられた。

【画像所見】

膵臓は全体的に腫大し、特に膵体部で顕著である。膵臓辺縁は不整に認められ、膵体部は一部粗雑且つ低増強であり、壊死や虚血を疑う【橙矢頭】。
 
また、膵臓周囲の脂肪濃度上昇を認め、浮腫/炎症の併発が示唆される。これら所見より膵実質の壊死/変性を伴った膵炎が疑われる。
 
総胆管は十二指腸開口部付近では造影増強を認め、膵炎による炎症の波及を疑う【黄色矢頭】。また、本所見よりも胆嚢側では拡張して見られることから狭小化が示唆され、閉塞が懸念される。肝内肝管も拡張が認められる【黄緑矢頭】。

その後の経過

検査後に主治医のもとで内科治療を継続。経過良好とのこと。