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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

MRI基礎知識〜MRIとは-2-〜

執筆:画像診断本部 学術担当部長 大西 ゆみ(獣医師)

信号の表現とパターン

前回MR画像では信号の強弱により画像を白黒の濃淡で表示すると説明しました。これを信号強度と呼び、白っぽく表示されることを高信号、黒っぽく表示されることを低信号と表現します。真ん中あたりの灰色のところは等信号です。

 

真ん中あたりとは? 一般的に、脳では正常灰白質、脊髄では脊髄実質と同等に表示されることを等信号と呼びます。それよりも明るい灰色は高信号、暗い灰色は低信号ということになりますが、少し白っぽいのか、顕著に白いのか、その程度も様々であり、やや高信号とか等〜高信号、といった表現も使用します。

 

 

前回、MRI検査では条件の違う色々な種類の画像(代表的なものとして「T2強調画像」「T1強調画像」「FLAIR画像」など)を撮像している、ということをお伝えしました。

 

同じ組織、同じ病変でも、撮像方法が違うと異なる信号強度を呈します。例えば、脳脊髄液のような水に近い液体は、

T2強調画像:高信号、FLAIR画像/T1強調画像:低信号」

を示します。多くの疾患には信号のパターンがあり、どのパターンに当てはまるかをみて診断しています。

必要であれば造影検査も実施します。病変部位の増強の有無・増強のされ方などにもある程度のパターンがあります。

 

この病変の信号パターンを知っておくと、MR画像で異常部位や病変を探すのに役立ちます。多くの病変はT2強調画像またはFLAIR画像で高信号を呈し、T1強調画像では等〜低信号を示します(例外はあります!)。つまりT2強調画像やFLAIR画像では、周りの組織や正常画像より“白く”見えるので画像上見つけやすいのです。

 

病変部位を見つけたらその後は、「T1強調画像」「拡散強調画像」「T2*強調画像」・・・・と見て、どのような性質のものかを判断していきます。

 

症例紹介

〜水頭症〜

【症例】

ミニチュア・ダックスフント 5ヶ月齢 未避妊雌 体重3.1kg

【主訴】

2週間ほど続く振戦/傾眠/盲目/顔面の知覚異常/旋回など

 

▽《参考動画》来場時の様子

(ミニチュアダックス 3ヶ月齢 未避妊雌 体重1.4kg)

丸い頭部(アップルドーム)/傾眠/無目的な旋回/斜視

 

 

【画像所見】

全ての脳室(側脳室/第三脳室.第四脳室)に顕著な拡大が見られ、VB値(脳室拡大の指標)は49%でした(正常:14%以下、重度拡大:25%以上)。

 

脳溝は不明瞭で脳圧の亢進が示唆されます。脳実質は菲薄化し、視床間橋の高さも2.9mmと低く(正常:5mm以上)、発育不良や脳圧亢進による影響が疑われます。頚部に脊髄空洞症所見も伴って見られます。

 

▽【MR画像】矢状断像 T2強調画像

 

▽【MR画像】横断像 T2強調画像

 

【診断】

若齢性(先天性)水頭症

【治療】

専門病院にて、脳室腹腔シャント術(V-Pシャント術)実施しました。

【経過】

手術の1ヶ月ほど後に、経過をお聞きしたところ、症状は順調に改善してきている、とのことでした。