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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

MRI基礎知識〜金属とMRI〜

執筆: ひがし東京センター長 花島 亜由美(獣医師)

前回まではMRIの基礎として原理や信号のパターンについてお話ししました。今回は個別の撮像法に入る前に番外編として、金属とMRIについてお話しいたします。と言いますのも皆様ご存知の通り、動物愛護管理法の改正により令和461日からブリーダーやペットショップ等の業者に対し、販売する犬や猫についてマイクロチップの装着が義務化されました。それに伴い、マイクロチップ挿入動物のMRI検査についてお問い合わせいただくことが多くなりましたので、マイクロチップを含めた金属とMRIについてお話しいたします。

金属とMRI

基本的にMRIは常に磁場を発生しているので、体内に磁性体が埋め込まれている場合は磁力の影響を受けます。

 

マイクロチップはフェライトと呼ばれる酸化鉄を主成分にコバルトやニッケル、マンガンなどを混合したもので出来た磁性体ですが、当社の実験で3TMRIにて、発熱等の影響は無く、検査は可能です。ただ、撮影部位が装着部位と近接している場合、アーティファクトを生じ、読影が不可能になる場合があります。

 

当社では0.4T、1.5T、3.0Tと複数の磁場強度のMRIを使用しておりますが、どの機種においてもアーティファクトは生じます。

 

その他の金属に関しましては1.5T以上のMRIではチタンや一部のステンレスなど非磁性体のみが受け入れ可能です。それ以外の金属ではミサイル効果(磁場への引き寄せ)、や高周波(ラジオ波)による発熱のリスクがあります。0.4Tであれば撮像は可能ですがマイクロチップ同様アーティファクトは生じます。一部のチタンでのみアーティファクトを生じることなく撮像可能です。

 

 マイクロチップなど金属製インプラントによる画像や生体への影響については、動物の大きさや検査部位、インプラントの位置の他、金属の材質・大きさ・密度などによっても変わってきますので、ご予約の際に直接お問い合わせください。

 

磁性体とは・・・鉄など磁石に吸い寄せられる性質を持つ金属

マイクロチップアーティファクト例

【事例1 MR画像(キャミック城南)】
<チワワ 4.74kg  0.4T MRI>

 

【事例2 MR画像(キャミックひがし東京)】
<マルチーズ 4.45kg  3.0T MRI>

 

【事例3 MR画像(キャミックひがし東京)】
<フレンチブルドック 12.1kg  3.0T MRI>

症例紹介

〜過去に環軸関節不安定症の手術を受けた脳腫瘍症例〜

【症例】ポメラニアン 12歳 去勢オス 体重 2.45kg

【主訴】けいれん発作

【画像所見】

右前頭葉に不整形な腫瘤が認められます。
以前に環軸関節固定術を受けた際の金属アーティファクトが生じています。
(この症例は0.4TのMRIで検査を行っております)

 

▽【MR画像】矢状断像 T2強調画像


▽【MR画像】背断像 造影後T1強調画像

このように体内に金属が入っている症例でも金属の種類、検査の部位やモダリティー、機械のスペックなどにより検査が可能な場合がありますので、直接施設へお問い合わせください。