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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

MRI基礎知識〜T1強調画像と造影剤について〜

執筆:画像診断本部 副本部長 兼 城南センター長 田頭 偉子(獣医師)

T1強調画像と造影剤について

前回までのコラムの中でもMR画像は信号強度の強弱により、画像を白と黒の濃淡で表示している。その中でも、T1強調画像では脳室内やくも膜下腔等の脳脊髄液や嚢胞等の液体成分は低信号(黒くなる)とお伝えしました。その他にも、脂肪組織は高信号(白くなる)、腫瘍はやや低信号(やや黒くなる)、骨は低信号(黒くなる)に見えます。また、T1強調画像では身体の解剖学的な構造が見やすい等の特徴があります。つまり、ざっくり言うと液体が低信号(黒くなる)の画像→T1強調画像となります。

 

MRI造影剤はMRIにおける構造の可視性を向上するために使われており、一般的にコントラストの強調にはガドリニウム製剤を使用します。ガドリニウムは弱い磁性をもつ原子で、その周囲にあるプロトンの緩和を促進してT1値を短縮する働きがあるので、T1強調画像における信号強度が上昇します。よって、造影剤による増強効果とは、造影前のT1強調画像と比べて造影後のT1強調画像で高信号(白くなること)をいいます。

 

検査では、先ずは造影剤を使わずに撮像します。続いて静脈から造影剤を注入して撮像します。造影剤は血液の豊富な組織に分布しますので、その分布の仕方によって病気を診断します。正常な血液脳関門は通過しないので、損傷した血液脳関門からガドリニウムが漏れだす病変や腫瘍の強調に有用です。

 

その他に、例外として亜急性期の出血(メトヘモグロビンを含む)、メラニン色素、ムチンや蛋白に富むドロッとした液体等はT1強調画像で高信号(白くなる)に見えます。

症例紹介

【症例1】造影剤により顕著な増強効果を認めた症例

【症例】ヨークシャー・テリア 11歳 避妊雌

【主訴】けいれん発作

 

【画像所見】髄膜腫瘍疑い

左前頭葉に径約6.6×7.0×8.3mm(体軸×幅×高さ)の腫瘤性病変

造影剤による均一な増強および髄膜との連続を疑う増強あり

 

症例紹介

【症例2】造影剤により顕著な増強効果を認めた症例

【症例】ポメラニアン 10歳 去勢雄

【主訴】けいれん発作

 

【画像所見】顆粒細胞腫疑い

左右の大脳〜延髄に及ぶ広範囲の脳底部から髄膜に沿った占拠性病変

T1強調画像でやや高信号を呈し、造影剤による明瞭な増強あり