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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

MRI基礎知識〜T2強調画像とFLAIR画像〜

執筆:城北副センター長 小川 藍(獣医師)

T2強調画像とFLAIR画像

前回T1強調画像と造影剤(造影後T1強調画像)について記載しましたが、基本的にはこれらにT2強調画像とFLAIR画像、今後掲載していく撮像条件を比較して画像診断を行っていきます。

 

T2強調画像は水を高信号(白くなる)で抽出します。また多くの病巣(炎症/梗塞など)が高信号に見えるので病変の抽出には不可欠になります。

 

FLAIRFluid Attenuated Inversion Recovery)画像は、T2強調画像の正常な水(頭蓋内においては脳脊髄液)を低信号(黒くなる)で表した画像であり、脳室周囲の病巣や壊死/脱落(髄液への置換)を伴った病巣を判断していく時に有用になってきます。

 

よって、脳室内や髄膜はT2強調画像で高信号、FLAIR画像で低信号になるので、重度の髄膜炎では髄膜はFLAIR画像で低信号にならず、高信号を呈します。

 

その他にも浮腫や梗塞病変でも高信号を呈する事が多く、本条件無くして病変を探すことは不可能と言っても過言ではありません。

 

T2強調画像とFLAIR画像の正常比較はこちらをご参照ください。

症例紹介

【症例1】壊死・脱落を伴った脳炎

【症例】小型犬ミックス(チワワ×M.ダックス) 3歳 去勢雄

【主訴】けいれん発作

【画像診断】脳炎(壊死性脳炎、原因不明髄膜脳脊髄炎など)

【画像所見】
頭頂葉〜後頭葉に炎症を疑う所見[T2強調画像/FLAIR画像:高信号、T1強調画像:等信号〜やや低信号、造影増強乏しい]を認めます。病変の一部はFLAIR画像で低信号の領域があり、脳実質の壊死・脱落による脳脊髄液への置換が示唆されます。(桃色矢頭)

症例紹介

【症例2】FIP(猫伝染性腹膜炎ウイルス性脳髄膜炎)

【症例】雑種猫 8ヶ月齢 未去勢雄

【主訴】四肢の姿勢反応低下、食べこぼし、瞳孔散大など

【画像診断】FIP(猫伝染性腹膜炎ウイルス性脳髄膜炎)

【画像所見】
顕著な脳室拡大を認めます。脳室辺縁はFLAIR画像で高信号、造影剤により顕著に増強され、脈絡叢や上衣層の炎症/肥厚、肉芽形成などが疑われます。
脳室内はFLAIR画像で等信号を呈し、前述した正常な脳脊髄液の信号(T2強調画像:高信号、FLAIR画像:低信号)から変化しており、脳脊髄液のタンパク濃度の上昇などが疑われます。