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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

MRI基礎知識〜脳神経異常(顔面神経、前庭蝸牛神経編)〜

執筆:ひがし 東京副センター長 堀 治美(獣医師)

脳神経異常

- 顔面神経、前庭蝸牛神経編 -

脳神経の障害は病変部位により、その症状が特徴的であるため、障害されている部位の推測が比較的行いやすいのではないでしょうか。
今回は第Ⅶ脳神経(顔面神経)、第Ⅷ脳神経(前庭蝸牛神経)についてです。

 

前庭蝸牛神経は身体の平衡感覚に関係する前庭神経と、聴覚に関係する蝸牛神経に分かれており、それぞれ橋に存在する神経核からでています。顔面神経は橋〜延髄にかけて存在する顔面神経核からでており、これらは接近し共に内耳道を走行することから、同時に障害されることもよく見られます。

 

特に前庭蝸牛神経は解剖が複雑で、3D でイメージすることが難しく、それぞれを確認することは困難なため、主に蝸牛とその周囲(半規管領域)の変化を見ています。

 

顔面神経の障害は画像での変化は微小なことが多いため、3D撮影による造影前後の画像を比較して評価しますが、一度の画像では捉えられず、経過を追う事でわかる症例もいます。

 

【正常のMR画像:犬】

症例紹介

【症例1】鼓室内リンパ腫の脳神経浸潤

症例雑種猫 10歳・避妊雌・4.7kg

 

〈症状

突然大声で鳴いた後動けず、ふらつくようになった。同時期に水平眼振、右捻転斜頸、瞳孔不同、嘔吐等の症状が見られた。

 

画像所見
右側鼓室内に、T2強調画像/FLAIR画像で等〜高信号、T1強調画像で等信号、造影剤により増強を示す病変を認める【青矢頭】。
病変と接する右蝸牛および前庭蝸牛神経、顔面神経には造影増強を認め、上記病変の波及を疑う。
左側にも類似した所見を認めるが、造影増強はごく一部であり、中耳粘膜の肥厚および液体貯留が主体と思われる。

 

MR画像

〈結果〉オトスコープによる細胞診の結果、リンパ腫と診断された。

症例紹介

【症例2】鼻咽頭ポリープの脳神経への波及

〈症例〉雑種猫 7ヶ月・去勢雄・3.4kg

 

〈症状〉
1ヶ月前から外耳炎症状があり治療していた。
半月前に右斜頸、眼振、旋回、ふらつきが出始めた。改善傾向。

 

〈画像所見〉
右側鼓室内背側に造影剤により増強される病変を認める【青矢頭】。
病変と接する蝸牛や前庭蝸牛神経/顔面神経および周囲髄膜【赤矢頭】は造影増強を認め、病変の浸潤や炎症の波及が疑われる。
一部は耳管と連続し、耳管の拡張も認める。
鼓室内腹側には炎症産物の貯留を疑う所見を認める。

 

〈MR画像〉

〈結果〉オトスコープにて中耳病変の病理検査実施:炎症性ポリープと診断された。