医療コラム
MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。
【注目文献レビュー 】血小板減少症で必要な画像診断は?

まさに夏真っ盛り!これだけ気温や湿度が高いと、ハエや蚊、ノミ、ダニなど虫の活動期間も長くなり、繁殖も活発になりそうです。
自然環境の変化が影響しているのか、これまでは西日本が中心だった重症熱性血小板減少症候群(SFTS:Severe fever with thrombocytopenia syndrome)の患者さんがとうとう東北地方でも出てしまいましたね。でもこの方、他県で感染された可能性が高いとのことです。
ペットの感染報告は、今年の5月(猫)と6月(犬)に茨城県内で初めて確認され、現時点での最北ではないかと思います。関東以北でもSFTSに注意しなければいけない日が来てしまいました。
SFTSに感染・発症した動物は、発熱や血小板減少とともに、けいれん発作がでることもあるそうなので、私たちも他人事ではありません。これからは、「主訴:けいれん発作」のご予約をお受けする際に、発熱の有無や血小板の数値など詳細をお伺いすることになると思いますので、ご協力よろしくお願いします。
さて、血小板減少症については比較的よく見られ、ある動物病院では犬の約5%が該当するとの報告があります。主な原因は、免疫介在性血小板減少症・感染・腫瘍が挙げられ、その他には、化学療法や薬剤による影響、ワクチン接種によるものなどもあります。
CT検査を通して私たちに何か協力できることはあるでしょうか?いつ・どんな時にCT検査をするべきか?参考になれば幸いです。
2023年Martín-Ambrosio Francés Mらにより、イギリスにおける犬の血小板減少症の原因の大規模な後ろ向き研究が発表されていますので、まずはこちらを。
文献紹介(1)
“Causes of thrombocytopenia in dogs in the United Kingdom: A retrospective study of 762 cases”
イギリスにおける犬の血小板減少症の原因:762症例の後ろ向き研究
Vet Med Sci. 2023 May 22;9(4):1495–1507. doi: 10.1002/vms3.1091
*紹介論文より改変
<目的>
・イギリスの紹介病院に来院した犬の血小板減少症の原因分布
・ 血小板数が原因鑑別に役立つか?
<方法>
•2017~2018年に7箇所の病院で血小板減少症と診断された犬762例が対象
•各症例を以下のカテゴリーに分類
➤原発性免疫介在性血小板減少症 pITP
➤感染症
➤腫瘍
➤炎症性/他の免疫介在性疾患
➤その他(薬剤反応、DIC、外傷など)
•血小板数や臨床症状などを比較解析
- <結果>
◆ 原因
• 腫瘍:27.3%
•その他:26.9%
•原発性免疫介在性血小板減少症 pITP:18.8%
• 炎症性/免疫介在性:14.4%
• 感染症:12.6%

◆ 血小板数
• 原発性免疫介在性血小板減少症pITPは、他群より有意に血小板が少なかった(中央値8×10⁹/L)
• 血小板数≤12×10⁹/Lは、pITP診断において90%の特異度、60%の感度
| 血小板が≤12×10⁹/Lならば、原発性免疫介在性血小板減少の可能性が非常に高いが、血小板が>12×10⁹/Lだったとしても血小板が原発性免疫介在性血小板減少の否定はできない。そこまで減少しない症例もいる。 |
◆臨床所見
• 出血兆候(歯肉出血、血尿など)は、原発性免疫介在性血小板減少症群で最多(76%)
• 感染症や腫瘍群では出血は少なかった(約10%)
◆年齢・性別
• 原発性免疫介在性血小板減少症群は若齢寄り(中央値7歳)、雌犬が多かった
• 腫瘍群は高齢寄り
◆ ベクター媒介性疾患
ベクター媒介感染症は全体のわずか1.7%(イギリスでは稀)
<結論>
• 血小板数の大幅低下は原発性免疫介在性血小板減少症pITPの有力な指標
• イギリスでは腫瘍とpITPが主な原因で、感染症の割合は他国より低い
• 出血兆候は血小板数が非常に少ないpITPに多い
追加で、血小板減少が最も多い原因である腫瘍の内訳です。
◆ 腫瘍の種類別症例数(208例)
• リンパ腫: 74例
• 肉腫: 33例
• 白血病: 26例
• カルチノーマ: 15例
• 肥満細胞腫: 13例
• その他/未分類腫瘍など: 47例

<出典:Veterinary Medicine and Science: Volume 9, Issue 4 July 2023 Pages 1495–1507 Wiley Online Library https://doi.org/10.1002/vms3.1091>
文献紹介(2)
腫瘍関連性の血小板減少症には様々な機序があります。
腫瘍細胞が血小板に対する抗体を誘導するもの、腫瘍により血管内で微小血栓が形成され血小板が大量に消費される症例、腫瘍が骨髄に浸潤し血小板の産生が抑制されるなどなど。
“Thrombocytopenia Associated With Neoplasia in Dogs”
犬における腫瘍関連血小板減少症
では、腫瘍疾患の犬の約10%に血小板減少が見られ、中でも血小板減少のリスクが高い腫瘍として、リンパ腫・血管肉腫・メラノーマを挙げています。
<出典:Journal of Veterinary Internal Medicine: Volume 8, Issue 6 November 1994 Pages 390-442 Wiley Online Library https://doi.org/10.1111/j.1939-1676.1994.tb03258.x >
文献紹介(3)
そして2024年ACVIMより犬の原発性免疫介在性血小板減少症pITPの国際コンセンサスが発表されています。
“ACVIM consensus statement on the diagnosis of immune thrombocytopenia in dogs and cats”
犬と猫における免疫性血小板減少症の診断に関するACVIMコンセンサスステートメント
J Vet Intern Med. 2024 May 16;38(4):1958–1981. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11256148/
診断についての考え方が興味深いのでご紹介します。
*紹介論文より改変
①診断の基本的考え方 pITPは除外診断!!
②診断ステップ
Step 1:重度の血小板減少を確認
• 血小板数が 30 × 10⁹/L 以下(特に 10〜20未満)ならpITPの可能性が高い
• 自動測定器の誤差回避で、血液塗抹で凝集や偽性減少を除外
Step 2:出血症状の有無を評価
• 出血斑、鼻出血、歯肉出血、血尿、血便など
• 血小板機能障害による出血兆候が多いのが特徴
Step 3:他の原因の除外
以下の検査を用いて、二次性血小板減少症を除外

Step 4:補助診断
• 骨髄検査は通常必要ないが、以下で推奨:
➤治療に反応しない場合(7日以上で血小板が上がらない)
➤ 同時に非再生性貧血などがある場合
③その他の特徴
比較的若齢〜中年齢、雌犬にやや多い
<出典:Journal of Veterinary Internal Medicine: Volume 38, Issue 4 July/August 2024 Pages 1951-2404 Wiley Online Library https://doi.org/10.1111/jvim.16996 >
診断にCTが入ってこないのが残念ですが、標準検査としては高額な検査になりますので、仕方ないですね。
ACVIMコンセンサスには、治療や経過、治療中止、脾臓摘出の適応とタイミングなども記述がありますので、よかったら見てみて下さい。
まだまだ暑い日々が続きますので、くれぐれもSFTSには気をつけてお過ごしください。
そういえば、今年はセミの声がいつもより少ないですね。。。