医療コラム
MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。
CT基礎知識〜副腎〜
CT基礎知識〜副腎〜
今回は副腎についてお伝え致します。
副腎は超音波検査にて描出が可能ですが、他の臓器の影響や動物の体格等により描出しにくい場合があり、
そのような時にもCT検査であれば明瞭に確認できます。
また腫瘍の鑑別等にも役立てることができるようになってきました。
今回は、血管解剖と血管に浸潤するタイプの副腎腫瘍についてご紹介いたします。
解剖と血管走行
左右腎動静脈の分岐部より頭側に位置し、副腎腹側を横隔腹静脈が、背側を横隔腹動脈が走行します。
副腎の静脈血は副腎静脈から排出されますが、左右で終止は異なり、
右側では直接後大静脈へ結合しますが、左側では左腎静脈を介し後大静脈へ入ります。
【模式図】副腎周囲の血管走行(腹側観)
副腎の腫瘍が大きくなると、隣接する血管へ浸潤(腫瘍栓の形成)を認めることがあります。
浸潤を認める血管としては、後大静脈、横隔腹静脈、腎静脈が主ですが、
横隔腹静脈は腫瘍が巨大になると判別が困難になります。
腰部筋肉等への浸潤が認められた場合には、
半奇静脈等の腹腔背側を走行する静脈と吻合する横隔腹静脈からの浸潤が疑われます。
以下、血管浸潤の認められたCT画像所見です。
〈凡例〉緑矢頭:副腎腫瘍 桃矢頭:後大静脈への血管浸潤
赤矢頭:左腎静脈
症例紹介
〜右副腎の褐色細胞腫〜
【症例】
・オーストラリアンラブラドゥードゥル
・8歳 去勢雄
・体重 13kg
【画像所見】
右副腎は大きさ約2.5×2.6×3.3cm(体軸×横軸×高さ)で見受けられ【緑矢頭】、
後大静脈への血管内浸潤も認める(腫瘍栓の大きさ:2.7×1.8×1.7cm)【桃矢頭】。
腫瘤辺縁は不明瞭で周囲には造影剤流出や出血を疑う所見を認め【黄矢頭】、
腫瘍の破綻が示唆される。
検査後、腫瘤を摘出し、悪性褐色細胞腫と診断された。
今回の症例のような血管浸潤や破綻、出血を伴わないタイプでは、
目立った症状がなく、偶発的に発見されることも多く、
定期的な健診が重要になります。
次回は、血管浸潤のまれな、一般的に遭遇する機会の多い副腎腫瘍についてお伝えいたします。