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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

【学会発表報告】獣医神経病学会2025 (第50回獣医神経病学会)2025.06.28-29

執筆:画像診断本部 学術担当 青木 琴代(獣医師)

早いもので今年も半分が過ぎました。皆さんの半年はどうだったでしょうか?

私自身は深く思考する症例にたくさん取り組めたので、いい半年だったなと感じています。でも予定が押してきているので、これから巻き返したいと思います(汗)。

さて、62829日で開催された獣医神経病学会2025にポスター演題で参加してきました。今回はその様子と内容を解説&小話バージョンでお知らせしたいと思います。

 

犬の急性期脳梗塞におけるMRI所見と予後因子の検討

※「獣医神経病学会2025」発表より引用

〈背景〉

犬の急性期脳梗塞は,急性発症且つ局在性の神経症状を呈し,MRI,特に拡散強調画像(DWI)により早期診断が可能となっている.過去の報告では,併発疾患を有する犬や病変体積が大きいほど予後が不良であることが示唆されている.一方で,2009年の実験的脳梗塞モデルでは,神経学的予後とADC値に有意な関連は見られなかったとの報告もある.近年,MRI技術の進展により臨床応用も深化しており,本研究では犬の急性期脳梗塞におけるMRI所見(ADC値、病変範囲、病変部位)と神経学的予後との関連を多角的に評価することを目的とした.

きっかけは、同じ様に見える脳梗塞にも神経障害が残ってしまう症例がいると気付いた事でした。診断時に何か予後について伝えられることはないだろうか?

拡散強調画像DWIは急性期脳梗塞・膿瘍・リンパ腫などの細胞密度の高い腫瘍・真珠腫性中耳炎などの診断で重要なシークエンスです。
▶︎「拡散強調画像DWI」のコラム記事はこちら

どれくらい水分子が動けないかを疾患に結びつけるおもしろい撮像方法で、ADC値が低いほど細胞間にある水分子は動けません。実は臨床応用が始まったのは1980年代です。

 

 

〈材料及び方法〉
2023~2025年に急性期脳梗塞と診断され,発症後3日以内にMRIを実施した犬33頭を対象とした.DWIで高信号,ADCmapで低信号を呈する病変に対し,病変部ADC最小値と対側健常部のADC最低値の比(ADCmin比)を算出.病変範囲はmm²単位で計測し,部位は5領域(大脳皮質・大脳基底核・間脳・脳幹・小脳)に分類.予後は神経症状の改善度により4群(0:完全改善〜3:死亡)に分類した.

ADCmin比/病変範囲/病変部位/年齢/犬種をそれぞれ予後と比較し単変量解析および多変量解析を行なった.

昨今AI導入に伴いMRIは目覚ましい発展を遂げています。過去にADC値は脳梗塞の予後と関連していないという報告がありましたが、人医の報告も含め、工夫により差は出るだろうと実感がありました。

誰もが正確に神経細胞障害の重症度を測定するのはどうするのがいいか?

ADC値は脳の場所(神経線維の走行に関連)により異なるので、対側の正常な箇所を比べることとしました。また、一番神経障害が強い位置を指標にしたいということから最低値をターゲットとしました。

精度を上げるために、他の神経症状がある症例や発症時期が曖昧な症例など、複数の除外項目を作りました。しかし2年間で症状発症後3日以内にMRIを撮影された症例が33例もあったことはご紹介いただく先生方のおかげだなと感謝しています。ありがとうございます。

また、当社の学術顧問であり、日本獣医生命科学大学の教授である長谷川先生からのご助言で、病変範囲、部位などを併せて検討することになりました。1番の理由は、梗塞がどこに起こるかによって予後はぜんぜん違うよね!という事です。血管支配はいつも気にしている項目でしたが、非常に勉強になる読影となりました。

 

 

〈結果〉
予後は0群16頭(48.5%),1群6頭(18.2%),2群7頭(21.2%),3群4頭(12.1%)であった.
ADCmin比は予後が悪化するほど有意に低下し,中央値は予後0で0.65,予後3では0.51であった(P=0.013).
病変範囲は,予後0群では中央値25.11 mm²,予後3群では中央値488.3mm²と明確な差が認められた(P=0.045).
部位別では小脳病変(14例中11例が予後0)では予後が良好であり,死亡例は0例であった(p=0.0092).一方,大脳皮質や脳幹では予後がばらつき,死亡症例を複数含んだ.
多変量解析では予後良好群(予後0,1)と不良群(予後2,3)で比較し,ADCmin比の低値と小脳以外の病変部位が予後不良に関連する傾向があった.


〈結論〉
犬の急性期脳梗塞において,神経学的予後の悪化はADCmin比の低下と有意に関連し,病変範囲の広さに関連する傾向にあった.また小脳病変は良好な予後と関連した.MRI所見は早期診断だけでなく予後予測においても有効な指標となる可能性がある.

まとめると、梗塞病変のところの一番低いADC値を対側と比較し、ADCmin病変部/ADCmin対側正常比が0.5以下だと、場所がどこであれ神経症状が残りそうだということです。

また梗塞により障害された範囲が広ければ広いほど予後は悪い。小脳病変は予後が比較的良く、間脳・脳幹病変は予後不良の割合が多い。

小脳・大脳病変に比べると間脳や脳幹の数が少ないので、今後はさらに検討症例を増やし、予後につながる様な指標を見つけていきたいと思います。

お忙しい中予後調査にご協力いただいた先生方、どうもありがとうございました。