医療コラム
MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。
CT基礎知識〜胸部の読影2〜
CT基礎知識
〜胸部の読影2〜
前回胸部のお話になりましたが、主病変以外にも多くの所見を認め、以前ご説明した撮影条件[縦隔条件(=軟部組織条件)、肺条件、骨条件など]や造影剤前後のCT値などを駆使して読影していきます。
肺野の腫瘍や結節以外にも連続画像で球状の所見は色々あります。
大動脈血栓
血管内に造影剤の欠損箇所を認めます【赤矢頭】。
循環不全や造影剤乱流により血管が不均一に増強される事もあるので、全ての時相で増強欠損があるかを確認します。
気管支の粘液栓
気管支内腔に軟部組織陰影を認め、内腔(低吸収)の連続性がなくなります【赤矢印】。
肺条件だけだと血管や肺結節と区別がつきにくいので、造影後縦隔条件でも確認します。
また、胸水貯留の症例も多々あり、胸水のCT値や胸壁の造影増強などにより、胸水の性状や腫瘍、炎症の有無などを探していきます。
リンパ腫
縦隔のリンパ節腫大および胸水貯留を認めます。
中皮腫の疑い
胸水貯留および胸壁に顕著な造影増強を認め、中皮腫などの腫瘍病変を疑います。
症例画像
〜肺葉捻転〜
【症例】小型mix(ポメラニアン×T.プードル)、7歳、去勢雄、体重4.3kg
【経過】1週間前から活動性低下し、5日程前から咳、食欲低下
かかりつけ病院にてレントゲンで左肺前葉に不透過性亢進所見を認めた
CT所見
左前葉全域にコンソリデーション、中心部には気腫性のガス陰影を認める【青矢頭】。左前葉への気管支走行は途中で寸断され【赤丸】、遠位の走行は不明瞭である。同肺葉は腫大し、造影剤により辺縁および肺動静脈の一部にわずかに増強を認めるのみであり、全体に乏しい。
【CT画像】造影後縦隔条件、背断像
【CT画像】肺条件、背断像
【CT画像】肺条件、横断像
画像診断
左肺前葉の捻転
予後
肺葉切除の手術をし、経過は良好
獣医師コメント
画像として典型的な肺葉捻転ですが、捻転している場合は胸水貯留を伴っていることも多く、レントゲンやエコー検査では判断に困ることがあると思います。また、特発性ではなく、捻転を起こす原因(腫瘍病変など)の精査にもCT検査は有用になりますので、お困りの症例がございましたらご相談いただけますと幸いです。
統計
ちなみに、キャミックでの過去10年における肺葉捻転症例で多かった犬種と捻転箇所は以下の通りでした。
【統計グラフ】肺葉捻転の箇所(2011年〜2021年 計 34症例)
左肺前葉 59%、右肺中葉 26%、右肺前葉 12%、右肺後葉 3%
【統計グラフ】肺葉捻転を起こした犬種(2011年〜2021年 計 34症例)
ポメラニアン 15%、パグ 14%、小型MIX 12%、ペキニーズ 9%、ボルゾイ 9%、その他 41%