医療コラム
MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。
CT基礎知識〜門脈体循環シャント〜
CT基礎知識〜門脈体循環シャント〜
今回は前回の肝臓と関連して、門脈体循環シャントについてお伝えいたします。
以前のコラムでご紹介した造影剤を用いた造影CT検査により、血管の体内動態を知ることが出来るとお伝えしました。体内の血管が最も増強されるのは造影剤投与後1分以内であり、迅速に複数の画像を撮影する必要があります。
そのため、Triple-phase helical CT法やボーラストラッキング法を用いて撮影することが多いです。
Triple-phase helical CT法
あらかじめ動脈相・門脈相・平衡相の撮像時間をきめて撮影する方法です。
ボーラストラッキング
画像上の血管にROI(region of interest:関心領域)を設置後、造影剤を投与し、ROI内の増強が一定レベルに達すると撮影を開始する方法です。
門脈シャントの検査では、門脈が小さく認識が難しい場合があるため、大動脈にROIを設置します。
(ボーラストラッキング法:ROIの設置場所及び、ROI内のCT値の推移)
統計
肝外シャントはシャント血管の起始部と体循環への流入地点により解剖学的に分類され、その内、左胃静脈(脾静脈)が起始部となるシャント血管が多く見られます(左胃静脈–奇静脈シャント、左胃静脈–横隔静脈シャントなど)。
実際に2021年にキャミックにご紹介いただいた症例でも、シャント血管を認めた77件の内、45件は左胃静脈が起始部のものでした。
症例画像
〜右胃静脈–横隔静脈シャント〜
【症例】ミックスドック(マルチーズ×Tプードル)去勢雄、3歳、3.24kg
【経過】
1歳時に、徘徊・流涎が見られ、MRIを実施したが特異所見は認められず。
シャント血管の位置確認のためのCT検査
画像所見
右胃静脈から胃の小弯内側を走行した後、横隔静脈と連絡し、後大静脈へ合流するシャント血管を認める(右胃静脈–横隔静脈シャント)。 最大径7.3mm
左胃静脈は欠損して見られる。
【CT画像】(MIP) 背断像 造影後門脈相
【CT画像】(MIP) 横断像 造影後門脈相
3D画像
【3D画像】腹側観
その後の経過
主治医のもとで腹腔鏡にてシャント血管を結紮し(右胃静脈への分岐部分)
9月に再度CT撮影した時点では、右胃静脈への分岐部分にて完全に血流が遮断されているのを確認した。臨床症状も落ち着いている。