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療コラム

MRI/CT検査・画像診断に関して、日常の診察や検査ご予約時にお役立ていただける医療情報をお届けします。

ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアの肺線維症の診断

執筆:画像診断本部 阿部(獣医師)

ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアの肺線維症の診断

今回はウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアについてです。

 

ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、通称ウエスティはスコットランド原産のテリアの一種で、某有名ドッグフードのキャラクターとして有名ですので認知度は比較的高いかもしれません。また同じスコットランド原産のスコティッシュ・テリアと共にスコッチウイスキーやスポーツブランドなどにも使用されているので馴染みのある先生もいるかもしれません。

 

とはいえ飼育頭数は多くないのかキャミックでの検査頭数はそれほど多くはなく、20132023年(11年間)で131頭しか検査に来ていません。検査の内訳はCT:48件、MRI:72件、セット:11件でした。

 

件数が少ないので、何かの病気が多いと言うことは難しいですが、当社の統計上椎間板ヘルニアが少ない事、頭部が揺れる・どこかが一時的に震えるなど痙攣ではない発作が目立つこと、頭部の扁平上皮癌は少し多い印象でした。

特発性肺線維症(CIPF)

今回の症例紹介では、ウエスティが好発犬種とされている肺疾患・特発性肺線維症(以下、CIPF)に着目していきたいと思います。

 

近年増えているC T依頼です。機器の向上と共に、びまん性肺疾患をCTで確認していく主治医の先生方の意向による増加だと思います。

 

CIPFは、主に中〜高齢のウエスティが罹患する原因不明の慢性進行性の間質性肺疾患です。

 

CIPFの診断は、シグナルメント/既往歴/各種臨床検査所見/他の呼吸器疾患の除外などに基づき実施されることが多いですが、確定診断は肺組織の病理学的検査によって行われます。しかし、犬で診断の為に肺生検が行われるのはその侵襲性の観点から稀であるのが実状です。

 

ヒトの特発性肺線維症(IPF)の診断では、CT所見が特徴的であれば肺生検が必須とならない場合もよくあるそうです。犬においてもCT検査はCIPFの診断に有用と言われており、CIPF のウエスティのCT所見の特徴に関してはいくつかの報告があります。

 

頻繁に認められるCT所見として、すりガラス陰影やモザイク状の肺濃度上昇が挙げられ、線状影や網状影も一般的とされています。

コンソリデーションや気管支壁の肥厚、結節なども報告されています。

 

その他に、肺高血圧症(以下、PH)も同時に確認されることがあります。報告ではCIPFのウエスティの20~60%PHを示唆する心エコー所見が認められています。

 

キャミックで検査を実施した症例においてもこれらの所見が確認されました。

症例紹介−1

【症例】ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア 9歳 去勢雄 体重14.9kg

【主訴】
発咳/苦しそう/興奮時のチアノーゼ

<画像所見>

胸部CT

肺の全域において、重度のすりガラス~コンソリデーション陰影を認め、大部分が無気肺様である【赤矢頭】。背側では部分的に含気した領域を認めるが、その領域は僅かであり、正常な肺濃度の箇所は認められない。含気した肺には胸膜直下まで連続する線状影を認める【黄矢頭】。

また、心臓ではVHS14.0と拡大が示唆される。主肺動脈は通常より拡張した印象を受け、肺高血圧の併発の可能性がある。

また、modified VetMousetrap™ device を使用した無麻酔CT検査についても報告があります。本研究では、ウェスティのCIPFの診断に適用可能であり、重篤な低酸素血症における麻酔リスクを回避できると結論付けています。

 

使用ポジショナーは上記と異なりますが、キャミックでも無麻酔CT検査を実施しています。続いて無麻酔CT検査を実施した症例をご紹介します。

症例紹介−2

【症例】ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア 14歳 避妊雌 体重6.0kg

【主訴】
発作様症状/パタンと倒れる

<画像所見>

胸部無麻酔CT

肺全域の主に気管支周囲にすりガラス~コンソリデーション陰影【赤矢頭】や胸膜直下まで連続する線状影【黄矢頭】が認められる。含気領域は確認されるが、正常な肺濃度の箇所は認められない。

また、心臓ではVHS12.2と拡大が示唆される。主肺動脈は通常より拡張した印象を受け、肺高血圧の併発の可能性がある。

まとめ

これら2症例の画像を比較すると無麻酔CT検査では呼吸/体動によるアーティファクトが生じていますが、無麻酔下であっても評価可能な画像でした。

 

キャミックで実施している無麻酔CT検査では、ご紹介にあたりいくつかの確認項目や注意事項がございます。(※詳細は無麻酔検査のご案内/コラム・無麻酔検査のススメを参照ください。)

 

症例の体格/一般状態/撮影部位よってはご相談が必要なケースもありますが、麻酔リスクによって検査を敬遠されていた症例にも、ぜひお役立ていただけますと幸いです。

 

無麻酔CT検査は全ての施設で実施しておりますので、迷った時はぜひ一度ご相談ください。お力になれるよう尽力いたします。

 

無麻酔CT検査のご案内

無麻酔CT検査のススメ